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労働法判例穴埋め問題④(賃金②・解雇)|社労士試験の勉強

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労働法判例穴埋め問題④(賃金②・解雇)|社労士試験対策

近年の社労士試験では、判例の出題が増えています。

そこで無料で利用できる「判例の穴埋め問題」を作成しました。

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穴埋め問題は8つあります。
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利用上の注意点
  • 本ページは厚生労働省の「確かめよう労働条件」を複写しています
    • 判例の骨子などを穴埋め問題としており、具体的な解説はしていません
  • 社労士試験に出題されるのは最高裁判例がメインです。
    • 最高裁判例には「★」を記載しています。
  • 日本法においては特に最高裁判所が示した判断を「判例」、下級審の判断は「裁判例」と区別されますが、ここではすべて「判例」として扱っています
この記事の執筆者

さむらい社労士

2006年に社労士合格。

社労士試験を15年以上見てきたノウハウをもとに、X(Twitter)で200名以上の受験生から無料相談を受ける。

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「賃金と他の債権の相殺」に関する判例

「賃金と他の債権の相殺」について、基本的な方向性は以下のとおりです。

【基本的な方向性】

(1) 使用者が労働者の債務不履行又は不法行為を理由とする損害賠償債権を(1. 自働債権 )として労働者の(2. 賃金債権 )と相殺することは賃金の全額払い原則違反として許されません。

(2) 労働者がその(3. 自由な意思 )に基づいて相殺に同意をしたと認めるに足りる(4. 合理的な理由 )が客観的に存在するときには、合意を得てした相殺は有効です。

(3) 過払賃金の清算のための(5. 調整的相殺 )は、過払いのあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に(6.合理的に接着)した時期に、労働者にあらかじめ予告され、その額が多岐にわたらないなど、労働者の(7.経済生活の安定)を脅かすおそれのない場合には、全額払い原則違反とはいえません。


「賃金と他の債権の相殺」に関する判例として、以下の事件を紹介します。

★=最高裁判例

  1. ★関西精機事件(S31.11.02最二小判)
  2. ★日新製鋼事件(H02.11.26最二小判)
  3. ★福岡県教組事件 (S50.03.06最一小判)

関西精機事件(S31.11.02最二小判)

【事案の概要】

(1) 営業不振のため休業したY社の従業員Xは、休業中も賃金を支払うとの約束が一部しか履行されなかったことから、未払い賃金の支払いを求めてY社を提訴したところ、Y社はXの債務不履行による損害賠償とXの賃金債権との相殺を主張したもの。

(2) 大阪高裁はY社の主張を認めたが、最高裁は、相殺は賃金の全額払い原則に反し許されず、この点の審理が不十分であるとして、高裁判決を破棄差し戻した。

【判示の骨子】

(1) 労働基準法24条1項は、賃金は原則としてその全額を支払わなければならない旨を規定しており、これによれば、(1. 賃金債権 )に対して損害賠償債権をもって相殺することは許されないと解される。

(2) 高裁判決が、賃金額を確定することなく、漫然とその全額について、Y社のXに対する(2.損害賠償債権)による相殺の意思表示を有効と認め、これによりXの(1. 賃金債権 )は消滅したものと判断したのは、法律の適用を誤った結果、審理不尽理由不備の違法を犯したものである。

日新製鋼事件(H02.11.26最二小判)

【事案の概要】

(1) 破産した労働者Xは、破産を申し立てる前に、使用者Yとの間で、Yからの借入金の返済の一部に自分の退職金等を充当することを同意していたが、Xの破産管財人X2は、かかる措置は労基法の全額払い原則に反するとして、退職金の支払いを求めて提訴したもの。

(2) 大阪地裁・大阪高裁ともに、本件相殺は合意によるものであり、労基法の全額払いの原則に反しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。

【判示の骨子】

(1) 労基法24条1項の賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に(1. 賃金を控除 )することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の(2.  経済生活  )を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の(3. 賃金債権 )と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその(4. 自由な意思 )に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の(4. 自由な意思 )に基づいてされたものであると認めるに足りる(5.合理的な理由)が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は労基法24条1項に違反するものとはいえない。

(2) ・・・(略)・・・

(3) ・・・(略)・・・

福岡県教組事件 (S50.03.06最一小判)

【事案の概要】

(1) Y県は、昭和33年5月21日に公立学校の教職員Xらに支給した給与中に1日分の給与の過払があったことから、同年8月21日に支給された給与から減額したところ、Xらはこれを不当として、減額分の返還を求めて提訴したもの。

(2) 福岡高裁は、3か月経過した後の賃金との相殺は、時機を逸しており、例外的に許容される場合に該当しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。

【判示の骨子】

(1) 賃金過払による相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に(1.合理的に接着)した時期においてなされ、その金額、方法等においても労働者の(2.経済生活の安定)をおびやかすおそれのないものである場合にかぎり、許されるものと解される。

(2) ・・・(略)・・・

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「賞与不払い」に関する判例

「賞与不払い」について、基本的な方向性は以下のとおりです。

【基本的な方向性】

(1) 賞与の(1. 請求権 )は、使用者の決定や労使の(2. 合意・慣行 )等によって、具体的な算定基準や算定方法が定められ、支給すべき金額を定めることにより初めて発生します。

(2) 賞与の支給日または一定の基準日に(3. 在籍する者 )のみ賞与を支給するという取扱いは、有効であるとされています。


「賞与不払い」に関する判例として、以下の事件を紹介します。

  1. ★福岡雙葉学園事件 (H19.12.18最三小判)
  2. ★大和銀行事件 (S57.10.07最一小判)

★福岡雙葉学園事件 (H19.12.18最三小判)

【事案の概要】

(1) 学校法人Yは、人事院勧告に準拠して給与規程を改定し、11月の理事会で、教職員の月給額の引き下げを決定した上、12月期の期末勤勉手当の支給額について改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の4月分から11月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた。
これに対し教職員Xらは、期末勤勉手当が一方的に減額され、一部しか支払われなかったとして、その残額の支給を求め提訴したもの。

(2) 福岡地裁は、11月の理事会による金額決定後は全額支払われており未払はないとして請求を棄却した。福岡高裁は、従前実績を下回る支給額が認められるためには個別の労働者側の同意又は特段の事情が必要として、福岡地裁判決を取り消し、Xらの請求を認容した。
これに対し最高裁は、原判決を破棄し、控訴を棄却し、地裁判決の結論を正当とした。

【判示の骨子】

(1) 期末勤勉手当の支給については、給与規程に「その都度理事会が定める金額を支給する。」との定めがあるにとどまり、具体的な支給額又はその算定方法の定めがないことから、・・・(略)・・・、期末勤勉手当の(1. 請求権 )は、理事会が支給すべき金額を定めることにより初めて(2. 具体的権利 )として発生する。

(2) 本件期末勤勉手当の支給額については、・・・(略)・・・、人事院勧告を受けて11月理事会で正式に決定する旨の留保が付されたことから、・・・(略)・・・、本件期末勤勉手当の(1. 請求権 )は、11月理事会の決定により初めて(2. 具体的権利 )として発生したものと解される。

(3) したがって、本件期末勤勉手当において本件調整をする旨の決定は、既に発生した(2. 具体的権利 )である期末勤勉手当の(1. 請求権 )を処分し又は変更するものであるとはいえず、この観点から効力を否定されることはない。

★大和銀行事件 (S57.10.07最一小判)

【事案の概要】

(1) Y銀行は、旧就業規則32条で「賞与は決算期毎の業績により各決算期につき1回支給する」と定め、慣行として支給日に在籍する者に対してのみ賞与を支給してきたが、労働組合からの申し入れを受け、昭和54年5月1日より就業規則32条を「賞与は決算期毎の業績により支給日に在籍している者に対し各決算期につき1回支給する」と改定し、同年4月下旬には従業員への周知徹底を図った。同年5月31日に退職し、支給日に在籍していなかったため賞与の支給を受けることができなかったXは、Y銀行に対して賞与の支払いを求めて提訴したもの。

(2) 大阪地裁、大阪高裁ともに、Yを退職した後のXの賞与については、支給日に在籍していなかったので、受給権を有しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。

【判示の骨子】

Y銀行においては、本件就業規則32条の改訂前から支給日に在籍している者に対してのみ決算期間を対象とする賞与が支給されるという(1.  慣行  )が存在し、就業規則32条の改訂は単にY銀行の労働組合の要請によって(1.  慣行  )を明文化したものであって、その内容においても(2. 合理性 )を有する。右事実関係のもとにおいては、Xは、Y銀行を退職した後を支給日とする賞与については(3. 受給権 )を有しない。

「退職金不払い」に関する判例

「退職金不払い」について、基本的な方向性は以下のとおりです。

【基本的な方向性】

(1) 退職金は、就業規則や労働協約により支給条件が明確に定められている場合、労働基準法11条の「(1. 労働の対償 )」としての賃金に該当します。その法的性格は、(2.賃金後払い)的性格、(3. 功労報償 )的性格、(4. 生活保障 )的性格を併せ持ち、個々の退職金の実態に即して判断することとなります。

(2) 退職金の支給基準において、一定の事由がある場合に退職金の減額や不支給を定めることは認められますが、(2.賃金後払い)的性格及び(3. 功労報償 )的性格を考慮すれば、労働者のそれまでの功績を失わせるほどの重大な(4. 背信行為 )がある場合などに限られます。


「退職金不払い」に関する判例として、以下の事件を紹介します。

  1. 小田急電鉄(退職金)事件 (H15.12.11東京高判)
  2. ★三晃社事件 (S52.08.09最二小判)

小田急電鉄(退職金)事件 (H15.12.11東京高判)

【事案の概要】

(1) 痴漢撲滅運動に取り組んでいる鉄道会社Yは、職員Xが、痴漢行為により2回逮捕され、執行猶予付き判決を受けた上、余罪も自白したことから、就業規則の懲戒条項に基づき懲戒解雇するとともに、退職金規程の不支給条項により、退職金を支払わなかったところ、Xは、

ⅰ)解雇は手続きに瑕疵があり、処分内容も重すぎて無効、

ⅱ)勤続20年間の功労を消し去るほどの不信行為には当たらないとして、

退職金を全額支払うよう求めて提訴した。

(2) 東京地裁は、懲戒解雇及び退職金の不支給について、いずれも有効としたが、東京高裁は、懲戒解雇は有効とするも、退職金は、Xの行為に相当程度の背信性があったとはいえないことから、全額不支給ではなく、3割を支給すべきであるとした。

【判示の骨子】

(1) 懲戒解雇により退職するものには退職金を支給しないとするような退職金の支給制限規定は、一方で、退職金が(1. 功労報償 )的な性格を有することに由来する。他方、退職金は、(2. 賃金の後払い)的な性格を有し、従業員の退職後の生活保障という意味合いをも有する。

(2) 本件のように、(2. 賃金の後払い)的要素の強い退職金について、その退職金全額を不支給とするには、それが当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。ことに、それが職務外の(3. 非違行為 )である場合には、業務上横領のような犯罪行為に匹敵するような強度な(4. 背信性 )を有することが必要である。このような事情がないにもかかわらず、会社と直接関係のない(5. 非違行為 )を理由に、退職金の全額を不支給とすることは、経済的にみて過酷な処分というべきであり、不利益処分一般に要求される(6. 比例原則 )にも反すると考えられる。

(3) 本件行為は、相当強度な(7. 背信性 )を持つ行為であるとまではいえないから、Y社は、本件条項に基づき、その退職金の全額について、支給を拒むことはできない。他方、会社及び従業員を挙げて痴漢撲滅に取り組んでいるY社にとって、本件行為が相当の不信行為であることは否定できないから、本件がその全額を支給すべき事案であるとは認め難く、本来支給されるべき退職金のうち、3割に相当する額の支給が認められるべきである。

★三晃社事件 (S52.08.09最二小判)

【事案の概要】

(1) 広告代理店Y社を、自己都合退職することとしたXは、今後同業他社に就職した場合には就業規則の定めに従い半額をY社に返還する旨を約して退職金を受け取ったが、同業他社へ入社したことを知ったY社から、支払済み退職金の半額を返還するよう求めて提訴されたもの。

(2) 名古屋地裁は、退職金の半額を没収するのは損害賠償を予定した約定に当たり無効であるとして、Y社の訴えを棄却した。
しかし、名古屋高裁は、従業員の足止め効果を意図したものとはいえ、実質的に損害賠償を予定したものとはいえないとして、原判決を取り消し、最高裁もこれを支持した

【判示の骨子】

(1) ・・・(略)・・・、Y社が退職金規則で、右制限に反して同業他社に再就職した社員の退職金を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が(1. 功労報償的 )な性格を併せ持っていることからすれば、合理性のない措置とはいえない。

(2) こうした退職金の定めは、制限に反する就職をしたことにより勤務中の(2.  功労  )に対する評価が減殺されて、一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか退職金の権利が発生しないこととする趣旨であると解すべきであり、この定めは、その退職金が労基法上の賃金にあたるとしても、労基法16条((3. 損害賠償予定 )の禁止)、24条1項((4. 全額払い )の原則)、民法90条((5. 公序良俗 ))等の規定に違反するものではない。

「解雇」に関する判例

「解雇」について、基本的な方向性は以下のとおりです。

【基本的な方向性】

(1) 判例では、使用者の解雇権の行使は、それが(1.客観的に合理的な理由)を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になるとしています((2. 解雇権濫用 )法理)。

(2) 解雇事由については、「 客観的に合理的な理由 」の主張立証は、就業規則に定める(3.解雇事由該当性)が中心的な争点となります。そして(3.解雇事由該当性)ありとされる場合においても、なお解雇の相当性が検討されます。

(3) 普通解雇の「 客観的に合理的な理由 」については、概ね次のように分類することができます。

  1. 労働者の(4. 労務提供 )の不能による解雇
  2. 能力不足、成績不良、勤務態度不良、(5. 適格性 )欠如による解雇
  3. (6. 職場規律  )違反、職務懈怠による解雇
  4. (7.経営上の必要性)による解雇
  5. (8.ユニオンショップ)協定による解雇

「解雇」に関する判例として、以下の事件を紹介します。

★=最高裁判例

  1. ★日本食塩製造事件(S50.04.25最二小判)
  2. 東京電力事件(H10.09.22東京地判)
  3. セガ・エンタープライゼス事件(H11.10.15東京地決)
  4. トラストシステム事件(H19.06.22東京地判)
  5. 東洋酸素事件(S54.10.29東京高判)
  6. ★三井倉庫港運事件(H01.12.14最一小判)

★日本食塩製造事件(S50.04.25最二小判)

【事案の概要】

会社から労働組合から離籍(除名)処分を受けたことによりユニオンショップ協定に基づいて解雇された従業員が、当該除名処分が無効であるなどとして雇用関係の存在確認と賃金支払を請求した事例。(破棄差戻)

【判示の骨子】

労働組合から除名された従業員に対し(1.ユニオン・ショップ協定)に基づく労働組合に対する義務の履行として会社が行う解雇は、(1.ユニオン・ショップ協定)によって会社に(2. 解雇義務 )が発生している場合にかぎり、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができるのであり、当該除名が無効な場合には、会社に(2. 解雇義務 )が生じないから、かかる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、(3.解雇権の濫用)として無効であるといわなければならない。

東京電力事件(H10.09.22東京地判)

【事案の概要】

(1) Y社に勤務する慢性腎不全による身体障害等級一級の嘱託社員Xが、・・・(略)・・・、体調が悪く入退院を繰り返し、・・・(略)・・・、8月からは全く出社しない状況になった。・・・(略)・・・。

(2) しかし、Xは、その後もほとんど出社しなかったため、Yは、・・・(略)・・・、このままの欠勤状況が続くと・・・(略)・・・嘱託雇用契約の継続は困難となる旨の書簡を郵送し、その後、就業規則に定める解雇規定の「心身虚弱のため業務に耐えられない場合」に該当するとして平成9年3月31日付けで予告解雇をしたことにつき、不当解雇であるとして、Xの定年年齢までの期間の生活保障などを求めた事例。(労働者敗訴)

【判示の骨子】

以上認定の事実からすれば、Xは、Yの就業規則取扱規程に定める心身虚弱のため業務に耐えられない場合に該当すると認められ、本件解雇には、(1.相当な解雇理由)が存在し、かつその手段も不相当なものでなく、解雇権の濫用には当たらないといえる。

セガ・エンタープライゼス事件(H11.10.15東京地決)

【事案の概要】

Y社に平成二年に大学院卒の正社員として採用された従業員Xが、労働能率が劣り、向上の見込みがない、積極性がない、自己中心的で協調性がない等として解雇されたことに対して、解雇を無効として地位保全・賃金仮払いの仮処分を申し立てた事例。(労働者勝)

【判示の骨子】

(1) Xが、Yの従業員として、(1. 平均的な水準 )に達していなかったからといって、直ちに本件解雇が有効となるわけではない。

(2) 就業規則一九条一項各号に規定する解雇事由をみると、「精神又は身体の障害により業務に堪えないとき」、「会社の経営上やむを得ない事由があるとき」など(2. 極めて限定的 )な場合に限られており、(1. 平均的な水準 )に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである。

(3) Xについて、検討するに、確かにすでに認定したとおり、(1. 平均的な水準 )に達しているとはいえないし、Yの従業員の中で下位一〇パーセント未満の考課順位ではある。しかし、人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに(3. 労働能率 )が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない。

(4) Yとしては、Xに対し、さらに体系的な教育、指導を実施することによって、その(3. 労働能率 )の向上を図る余地もあるというべきであり(実際には、債権者の試験結果が平均点前後であった技術教育を除いては、このような教育、指導が行われた形跡はない。)、いまだ「(4. 労働能率 )が劣り、向上の見込みがない」ときに該当するとはいえない。

トラストシステム事件(H19.06.22東京地判)

【事案の概要】

情報処理業界向けのサービス業を営む会社YのシステムエンジニアXが、派遣先で繰り返し行った長時間にわたる電子メールの私的使用や、私的な要員派遣業務のあっせん行為が、服務規律、職務専念義務に違反していたとして解雇されたのは解雇権の濫用であるとして、地位保全と未払賃金の支払等を請求した事例。(労働者勝訴)

【判示の骨子】

Xの私用メールなどについては、Xの義務に違反するところがあるといわざるを得ないが、これを解雇理由として(1. 過大に評価)することはできず、また、要員の私的あっせん行為についても、そのような事実が窺われるとする余地はあるものの、これを認めるに足りず、このようなYが主張する(2. 服務規律 )違反、(3.職務専念義務)違反については、解雇を可能ならしめるほどに重大なものとまでいうことはできない。また、Yの指摘するXの能力不足についても、上記のとおり、解雇を理由づけるほどまでに能力を欠いているとは認め難い。そして、これらの事情を総合すると、Xの勤務態度、能力につき全く問題がないとはいえないものの、これをもってしても、いまだXを解雇するについて(4. 正当な理由 )があるとまでいうことはできず、本件解雇は、(5.解雇権の濫用)として、その効力を生じないものといわざるを得ない。

東洋酸素事件(S54.10.29東京高判)

【事案の概要】

特定の製造部門全面閉鎖に伴う整理解雇につき、就業規則の定める「やむをえない事業の都合によるとき」には当たらないとして従業員の地位の保全等を認めた原判決について、会社がこの取消を求め控訴した事例。(使用者勝訴)

【判示の骨子】

特定の事業部門の閉鎖に伴い当該事業部門に勤務する従業員を解雇するについて、それが「やむを得ない事業の都合」によるものと言い得るためには、

第一に、当該事業部門を閉鎖することが企業の(1.合理的運営上)やむをえない必要に基づくものと認められる場合であること、

第二に、当該事業部門に勤務する従業員を同一又は(2.  遠隔  )でない他の事業場における他の事業部門の同一又は(3. 類似職種 )に充当する余地がない場合、あるいは配置転換を行ってもなお全企業的に見て(4. 剰員の発生 )が避けられない場合であって、解雇が特定事業部門の閉鎖を理由に(5. 会社の恣意 )によってなされるものでないこと、

第三に、具体的な解雇対象者の選定が(6.客観的、合理的)な基準に基づくものであること、以上の三個の要件を充足することを要し、特段の事情のない限り、それをもって足りるものと解するのが相当である。

★三井倉庫港運事件(H01.12.14最一小判)

【事案の概要】

Y社は、A労働組合との間にY社に所属する海上コンテナトレーラー運転手で、A組合に加入しない者及びA組合を除名された者を解雇する旨のユニオン・ショップ協定を締結していたところ、Y社に勤務する海上コンテナトレーラー運転手Xらが、昭和58年2月21日午前8時半ころ、A組合に対して脱退届を提出して脱退し、即刻訴外B労働組合に加入し、その旨を同日午前9時10分ころY社に通告した。A組合は、同日、Y社に対しユニオン・ショップ協定に基づく解雇を要求し、Y社は、同日午後6時ころ本件ユニオン・ショップ協定に基づきXらを解雇した。このため、Xら前記ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は無効であるとしてその効力を争った事例。(労働者勝訴)

【判示の骨子】

(1) ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の(1.組合選択の自由)及び他の(2.労働組合の団結権)を侵害する場合には許されないものというべきである。

(2) したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の(3. 解雇義務 )を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。

(3) そうすると、会社が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような従業員に対してした解雇は、同協定に基づく(3. 解雇義務 )が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に(4.解雇の合理性)を裏付ける特段の事由がない限り、(5.解雇権の濫用)として無効であるといわざるを得ない。

(4) Yが、ユニオン・ショップ協定に基づき、Xらに対してした本件各解雇は、同協定によるYの(3. 解雇義務 )が生じていないときにされたものであり、本件において他にその(6. 合理性 )を裏付ける特段の事由を認めることはできないから、結局、本件各解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、(5.解雇権の濫用)として無効であるといわなければならない。

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「懲戒」に関する判例

「懲戒」について、基本的な方向性は以下のとおりです。

【基本的な方向性】

(1) 職務の遂行に関係のない(1.  職場外 )の行為であっても、会社の(2.  円滑な運営  )に支障をきたすおそれがある場合や(3. 社会的評価 )に重大な悪影響を与えるような場合には、その行為を理由に懲戒処分を行うことが認められます。

(2) 労働者の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというには、必ずしも、(4.  業務  )を具体的に阻害したことや取引上の(5.  不利益  )が現に発生したことなどを必要とするものではありませんが、その行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針やその従業員の地位・職種等諸般の事情から(6.  総合的  )に判断して、会社の(7. 社会的評価 )に及ぼす悪影響が相当重大であると(8.  客観的  )に評価される場合でなければなりません。


「懲戒」に関する判例として、以下の事件を紹介します。

★=最高裁判例

  1. ★日本鋼管事件(S49.03.15最二小判)

★日本鋼管事件(S49.03.15最二小判)

【事案の概要】

(1) Y社は、刑事特別法違反の罪により逮捕、起訴された従業員Xを、就業規則所定の「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」に該当するとして懲戒(諭旨)解雇したところ、Xは、懲戒事由に当たらないとして、従業員としての地位確認を求めたもの。

(2) 最高裁は、Xの行為がY社の社会的評価を低下させたことは否定できないが、懲戒解雇又は諭旨解雇の事由とするには不十分であるとして、従業員たる地位を有することを確認するとした東京高裁判決を支持した。

【判示の骨子】

(1) 会社は、その(1. 社会的評価 )に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については、職務の遂行とは直接関係ない(2. 私生活上 )のものであっても規制することができる。

(2) 会社の体面を著しく汚したというには、必ずしも(3.  業務  )を具体的に阻害したとか取引上の(4.  不利益  )が現に発生したことを必要としないが、その行為の性質や情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針やその従業員の地位・職種等諸般の事情を(5.  総合的  )に判断して、従業員の行為が、会社の(6. 社会的評価 )に及ぼす悪影響が相当重大であると(7.  客観的  )に評価される必要がある。

(3) Xらの行為がY社の(6. 社会的評価 )を若干低下せしめたことは否定できないが、Y社の体面を著しく汚したものとして懲戒解雇又は諭旨解雇の事由とするには、なお不十分である。

その他の判例穴埋め問題

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  1. 主要法令
  2. 労一①
  3. 労一②
  4. 社一
  5. その他

※本ページは厚生労働省の「確かめよう労働条件」を元に作成されております。

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